パチンコ店の評価

1.パチンコ店を取り巻く市場環境

かつては30兆円産業と言われていたパチンコ業界も、過当競争で中小・零細店が減少し、1店舗500台以上の規模の大型店が増加しましたが、その大型店でも各地で倒産や閉鎖が見られるようになりました。公益財団法人日本生産性本部発表の「レジャー白書2018」によれば、平成29年のパチンコの参加人口は前年から40万人減り900万人となり、減少傾向で推移しています。また、市場規模は19兆5,400億円(前年比4.3%減)と減少を続けており、業況は依然として悪化傾向にあります。昭和から平成の初めごろにかけては、約3,000万人と参加人口があったことから、ピーク時の30%にまで落ち込んでおり、今後もレジャーの多様化につれ、パチンコ業界の市場規模の縮小が予想されます。
 この背景には、パチンコ中毒が社会問題化したことを受け、2004年の遊戯機の射幸性の抑制と不正防止対策の強化に関する風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行規則等の改正(いわゆる5号機問題)、2006年・2016年の風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部改正等によって、規制強化が進められたこと等があります。
 そのため業界では、貸玉・貸コイン(以下、貸玉等)の単価を従来の4分の1に下げた「1円パチンコ」・「5円スロット」の登場や、大当たりの確率を通常より高く設定した「甘デジ」の投入など、手軽に安く遊べるレジャー産業への脱皮を模索しています。

2.パチンコ店の評価のポイント

  1. マーケット分析
     パチンコ事業は、一定の圏域内にいる遊戯対象人口を、圏域内の店舗で奪い合う構造と見ることができます。そのため、遊戯対象人口に対する店舗(台数)が多ければ圏域全体での稼働率は低くなり、既存店舗の閉鎖・縮小が予想されます。逆に、遊戯対象人口に対する店舗(台数)が少なければ圏域全体での稼働率は高くなり、新規参入の余地が認められると見ることができます。
     そのため、パチンコ店等の収益性の将来予測を行うためには、対象店舗の稼働状況のみならず、当該圏域内に存する競合店の稼働状況等を把握する必要があります。
  2. 売上高
     パチンコ店等の売上高は、貸玉等の貸出により発生します。実際には、稼働率も考慮した1日の台当たり売上を想定し、これに台数・営業日数を乗じて求めます。
  3. 売上原価(率)・粗利(率)
     パチンコ事業における売上原価率とは貸玉等の貸出売上に対する出玉の割合であり、売上高から売上原価を控除した粗利はホール側の取り分となります。そのため、パチンコ店等の粗利率が高いことは単年の決算上はプラスに働きますが、粗利率が高い=出玉・換金率が低いということになり、中長期的には顧客の減少・売上の低下につながってしまいます。また逆に、粗利率が低いと顧客獲得にはプラスに働きますが、薄利多売状態に陥ってしまいます。
     この粗利率は、ホール側の営業方針によってある程度恣意的に決められるものであり、新規出店直後で顧客を獲得したい場合に赤字覚悟で低水準に抑えるケースや、採算の悪い店舗を黒字化させるために粗利率を高くするケースなどが見られます。そのため、決算書の数値だけでなく、各店舗の置かれた状況に応じた分析が必要となります。
  4. 販管費等
     経費の中で特に注意が必要なのが、台の入れ替えコストとリニューアル費用です。台の入れ替えコストについては、業界の平均ではパチンコ台及びスロット台の回転率が年1.0超となっており、全台につき1年に1回は入れ替えを行っている計算になります。そのため、売上高の将来の動向予測と併せて、それに見合う十分な台の入れ替えコストの計上が重要です。
     なお、不採算店舗については資金繰りの悪化により台の入れ替えが進められないことも多いですが、これによって費用の抑制という意味で単年の決算上プラスに働くことがあります。但し、台の入れ替えが行われないと、顧客離れが進み、将来の売上高にはマイナスとなります。
     また、パチンコ店等では通常3~5年程度でハードのリニューアルが行われることが多く、このリニューアルのためのコストの計上も重要となります。
  5. その他
     パチンコ店等を評価する際のポイントは上記のとおりですが、これらの各項目の判断の際にもう一つ重要なのが、貸玉等の単価です。これも前述のとおり、従来の4円パチンコ・20円スロットのほかに、ライトユーザー向けの1円パチンコ・5円スロットが登場していますが、対象店舗がこのいずれの業態であるかによって、売上高・粗利率・台の入れ替えコスト等がそれぞれ異なってきます。
     現在出されているパチンコ業界の経営指標に関する資料では、この業態による区別は認められませんが、今後これらの業態の相違による各項目の差異の明確化が期待されます。
     また、関連法規の改正などにより、市場環境が大きく変わる可能性があることにも留意が必要です。

編集者: 不動産鑑定士 髙木 一博

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