スキー場(索道業)の評価

1.スキー場(索道業)の業界の現状とその展望

スキー場の入込数はピーク時から約60%減と大きく減少しています。また、スキー場の数もピーク時から約30%減と年々減少していますが、スキー場の入込数の減少に比べるとその減少ペースは遅く、スキー場間の生き残りをかけた競争は今後も激しさを増していくことが予想されます。
このような状況下にあっても、顧客のニーズを的確に把握し独自の経営戦略を打ち出しているスキー場では業績を伸ばしてきています。近年、アップサイドの要因として注目されているのが、インバウンド(訪日外国人スキー客)の取り込みや夏季シーズン(グリーンシーズン)の利用です。
時差が少なく、雪質の良さからオーストラリア・台湾・韓国などの外国人スキー客が近年増加しています。今後、中国を中心としたアジア圏の発展により、さらに多くの外国人スキー客が訪れる可能性があります。

また、メタボリックシンドロームなどによる健康に対する意識の高まりから、軽登山・トレッキング等が、時間・お金に余裕のある中高年層を中心に広がっています。スキー場においては、軽登山等のための輸送機関としてリフト・ゴンドラが利用されており、夏季シーズンの売上が伸びてきているスキー場も多く、今後も増加の余地があると考えられています。なお、夏季シーズンの活用については、既存の観光資源がなくても、スキー場内にゆり園やマウンテンバイクのコースを造るなど独自の企画で客を呼び込み、業績を伸ばしているところもあります。
スキー客の大幅な増加が期待できない中、ニーズにマッチした企画・運営を行うことに加え、訪日外国人スキー客を引き付けることができる国際的に競争力のあるスキー場の形成や夏季シーズンの有効活用が、今後生き残るための重要なポイントになっているとも言えるでしょう。

2.スキー場の評価について

  1. 市場分析
    マクロ的な「スキー場が存するエリアの全国的な位置付け」、ミクロ的な「エリア内における対象スキー場の位置付け」が、スキー場の価値に直結しています。
    そして、この位置付けの把握に当たっては、競合比較の切り口から分析することにより、対象スキー場の存するエリア及び対象スキー場の問題点をも抽出していくことになります。
    1. エリアの位置付け
      都市圏からのアクセス条件は、最近のレジャー需要の多様化からエリア全体の競争力を把握する上で特に重視されるべきものです。さらには、訪日外国人旅行者の取り込みの可否に係る、国際線の空港からのアクセス条件(LCCの乗り入れ含む)及び外国人が好む観光地までのアクセスの良さ(スキーを兼ねた日本の観光スポット巡りも多いため)も重要な要因となります。
  2. 対象スキー場の位置付け
    対象スキー場の位置付けの把握に当たっては、現時点で地域ニーズに合ったスキー場となっている否か、今後の地域ニーズに沿ったスキー場へと対応が可能であるか否か、対象スキー場の強み・弱みを今後伸ばせる又改善できるか否か等を主な切り口として分析していきます。なお、対象スキー場のみならず、その周辺の宿泊施設・各種販売施設等を含めた一体としての利便性・雰囲気等による競争力の優劣も、合せて分析する必要があります。
  • 収支項目の分析
    スキー場の評価についても、他の事業用不動産と同様に、過去の収支の状況をベースに、今後予想される内外部の変動要因を加味して、評価していくことになります。
    1. 売上
      過去の売上を客数・客単価等に分解し、エリア及びエリア内における対象スキー場の競争力等を考慮して、今後の売上分析・予測をしていくことになります。
      なお、過去の売上の分析に当たっては、各項目の変動に影響を与えた要因等の把握が特に重要となります。例えば、売上は降雪の状況で左右されることになり、雪不足の年は多くのスキー場で売上が減少する傾向にあります(逆に豪雪の場合も減少することがあります)。一方、標高が高く、雪不足の年でも降雪が安定しているスキー場においては、雪不足の年ほど客が集中して売上が伸びるという逆転現象が生じたりもするなど、天候に大きく左右されます。また、休日の並びやうるう年によっても売上が左右されることから、年度毎の祝祭日などの確認も必要となってます。
    2. 費用項目
      他の事業用不動産同様、過去の支出額・原価率・経費率等をベンチマーク指標と照らし合わせながら費用構成を分析してベースを固め、今後のエリアの動向予測及び対象スキー場の方向性を加味して算出することになります。なお、他の事業用不動産と異なるスキー場固有の留意点は以下のようなものが挙げられます。
      1. 地代
        ゲレンデなどで土地の一部を賃借しているケースが多く見られます。なお、スキー場客相手の宿泊施設・店舗等を営んでいるなど、スキー場と何らかの関わりがある底地人が多くを占める場合には、地域一体となって地代減額に協力的なケースもあり、地代の減額が期待できます。
      2. 修繕費・CAPEXなど(リフト・ゴンドラの維持管理等に要するコスト)
        リフト・ゴンドラの安全運行がスキー場の生命線であり、維持管理等のメンテナンスには、多くのコストと人力が必要となります。この大きなウェイトを占めるリフト・ゴンドラの維持管理等について、外注に頼ることなく自前で管理できるノウハウがあれば、他のスキー場と比べてコストを抑えることができます。また、雪量をコントロールする降雪車やゲレンデをコンディショニングする圧雪車の維持管理や更新も欠かせないものとなっています。
      3. 資金調達コスト
        夏季シーズンに営業を行うことができる通年型のスキー場と、冬季シーズンのみ営業を行うスキー場とでは、資金調達面でのコストに差が生じることになります。これは、夏季シーズンに日銭が入るか否かによるもので、冬季シーズンのみ営業を行うスキー場は、夏季シーズンの運転資金等について借り入れによる調達が多くなる傾向にあります。

編集者: 不動産鑑定士 高木 一博

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